47都道府県のうち39が海に面し、日常圏から海へアクセスしやすい。
都市圏の多くが沿岸に位置し、仕事帰りに潮風や夕焼けを浴びるといった「短時間の非日常」が手に入りやすい。週末も電車や車で気軽に向かえ、家族連れでも準備が少なく楽しめる選択肢が豊富だ。交通費や時間のハードルが低いから、頻度高く通えて心身のリフレッシュが習慣化しやすい。山の静謐も魅力だが、海は日常のすぐ隣にある開かれたレクリエーション資源として優位性がある。
日本の海域は国土の約12倍の広さで、貿易の重量ベース約99%を海運が担い、暮らしと食文化を支える。
輸出入の基盤である港は地域経済の要であり、海が動けば日本の暮らしが動く。広大なEEZは水産資源だけでなく、洋上風力などの再生可能エネルギー開発の余地を示す。四季折々の魚介が食卓を彩り、すしや出汁文化など日本の味の土台は海の恵みによって支えられている。海を賢く使い、守ることは、地域の雇用と食の安全保障、そしてエネルギー転換を同時に前進させる道だ。
約3万kmの海岸線と約1万4千の島が、多様な景観と遊びを生み出す。
日本海の荒波、太平洋のスウェル、瀬戸内の多島美、沖縄のサンゴ礁と、同じ海でも表情が際立って異なる。釣り・サーフィン・SUP・磯遊び・潮干狩り・ビーチラン・花火大会・初日の出など、年齢や体力に応じて段階的に楽しめる。山では到達や装備がネックになる活動も、海なら海岸や港という安全な導入地点が多く、スモールスタートしやすい。移動距離を抑えつつ多様な体験へ切り替えられる利便性は、忙しい現代人のライフスタイルと相性が良い。
水平線と波音がもたらす「青の治癒」は、思考の整理とストレス回復を後押しする。
見渡す限りの水平線は視野を広げ、考えを詰まらせない余白を与えてくれる。規則的な波音は呼吸と歩調を整え、海辺の散歩や浜での静かな時間が自然にマインドフルネスへ導く。砂浜というフラットな場は、子どもから高齢者まで無理なく同じ空間を共有でき、コミュニティのつながりも育む。山の厳粛さを敬いつつも、海の包容力と可変性は日常の回復基地として多くの人に開かれている。